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【新本】シュークリーム

2,200円

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《祖母の手からそのシュークリームを貰って、そっと中の汁を啜った味は今でも忘れられない。》  ── 「シュークリーム」本書148頁より 真顔で諧謔を滔々と語るゆえ、誘発させたつもりなのか真面目なのか分からなくなるような、境のきわでの笑いを喚起させる随筆を多く残した作家、内田百閒(1889-1971)。 本書では、その才気を軽やかに織り込んだ随筆のみならず、肝を冷やすような怪奇・幻想──ときに妖艶をもまとう作品も得意にしていた作家の印が表れたと言いうる随筆も収録されています。 なお本書は、灯光舎「本のともしび」シリーズ第5作目。 そしてシリーズ第1期を締めるタイトルでもあります。 内容は、以下7編の随筆たち。 ・「漱石先生臨終記」 多くの弟子たちに慕われた漱石。その一人である百閒が独特の語り口と溢れ出る畏敬によって綴る漱石への想いや見た姿、そして最後まで「狎れ親しむ事が出來なかった」という語りの裏に見える、一ファンのような漱石への目線をなぞることのできる一篇。 ・「長春香」 大震災と火事によって亡くなったとされる教え子の様子や一緒に過ごした時間、そして学生たちとその教え子を弔ったときの出来事。あらゆる記憶がまるで鍋のようにごちゃ混ぜになっていることを飄々と書くも、焼けた家のあったところを通るたびに、その子の存在を痛切に感じる様子を綴った一編。 ・「昇天」 肺病に罹り余命いくばくかになった、おれい。昔に関係のあった彼女が伏せるキリスト教病院に見舞いに行き、「昇天」し駆けつけるまでの出来事を綴った一篇。 病院内の温度や働く人たち、あるいは自身をまとう気色を怪しく書く一方で、おれいが徐々に信心深くなる様子を対比して写し出し、人の抱える不安や諦念か昇華されてゆく描写からは、随筆なのか小説なのか境がぼやける巧みを感じられます。 ・「搔痒記」 途端に頭が痒くなり、掻いても掻いてもやまぬほど。病院へ行き包帯を巻いてもらっても、痒くてならない。でも、掻けない。頭を柱にぶつけたり、殴ってみたり、それでも痒さは治らない。しかし、季節が巡れば自然と治り、いっそのこと剃髪を決める。治ったことを漱石に知らせたいゆえだったけれど、やはり容姿にまつわる自意識の問題からは逃れられない──。 文章で裸になること、よもや坊主になること。そこには関係がない、と認めつつも、思い出す「搔痒」のこと。 ・「亂れ輪舌 FOT」 F、O、T、と各イニシャルにあたる「先生」にまつわる話、あるいは連関し随想に随想を重ね、本題から逸れるも抱腹絶倒してしまうエピソードや、胸を打つ想いをさりげなく最後に書き残した3題を収めた随筆。 《無形の用事を片端から始末して行く事が困難であるのみならず、有形のそこいらにある諸物を、邪魔󠄁󠄁にならぬ樣片づけて行く事が出來ない。(…)考えて見るといらいらして、むしゃくしゃする。しかし徒らに焦慮しても、出來ない事は出來ないし、どうにもならない物は仕方がない。止んぬるかなと觀じてほっておく。》── 「亂れ輪舌 FOT」 内「一 F」116-117頁より ・「寺田寅彥博󠄁士」 自身と同じく漱石門下であった寺田寅彦について寄せた随想。 弟子同士といっても10歳以上年長であるうえに、あまり会ったことのない寺田に筆をとって記憶を模索するも、具体的な親交はなかなか思い浮かばないなか、特筆すること。 それは、物理学者であるのに文筆の仕事を膨大にこなすこと、そして病床に臥しても医者や病院の世話になりたがらなかった死生観──。 百閒が接し、感じ、想う、寺田寅彦についての一篇。 ・「シュークリーム」 六高時代、夜に学業を進め小腹が空いたとき。シュークリームが食べたいと祖母に伝えると、暗い中下駄の音を鳴らして買ってきてくれていた。そうして、シュークリームを食べると思い浮かぶ祖母の顔──。 掌編とも言えそうな短い文のなかで、イメージと人、そして記憶と郷愁がおり混ざる、表題作でもある一篇。 なお、本文中の漢字は底本にならって、すべて旧字体表記。 当時の文学の味わいをこの部分でも感じることができます。 また表紙は、シュークリームの生地とカスタードクリームを反映させた意匠。 題字には焼き色を思わされる彩色を帯びたホログラム加工が施されています。(1,2,6枚目の写真をご参照) 同シリーズ作品おなじみ、表見返しにある灯光舎のロゴの灯りの部分には、抜き加工。 次の頁である扉のやわらかなクリーム色が覗くデザインになっています。(3,4枚目の写真をご参照) ************************ 著者:内田百閒 撰者:山本善行 装幀:野田和浩 出版社:灯光舎 発行年:2023年3月10日 初版 状態:B6変型上製本、160頁、新本のため新品

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